ゲームボーイ音源をサンプリングした、
チップチューンに最適なフリー音色素材集ゲームボーイ音源をサンプリングして、枯れた技術であるサウンドフォントのSF2フォーマットに編集したものです。
ゲームボーイサウンドフォントをiOSアプリの「bs-16i」や、パソコンのDAWソフトなどに読み込むと、iPhone・iPad・パソコンをゲームボーイの音がする楽器として使うことができるようになります。
さて、近年国内外で昔のパソコンやゲーム機を演奏活動に取り入れたチップチューンという音楽スタイルが注目を集めています。ゲームボーイはチップチューンの代表的な楽器であり、その洗練されたデザインはファッションアイテムとしても世代を超えて愛されています。
昔のパソコンやゲーム機を楽器として使うには、ソフトやハードについての専門知識が必要になる場合が多いですが、DAWソフトの基本操作ができれば、あとは打ち込みのちょっとしたコツを覚えるだけで簡単にチップチューンを作ることができるようになるでしょう。
ゲームボーイサウンドフォントは、実際にゲームボーイの開発現場で使用していたデフォルト設定を参考にした即戦力系の音色になっています。さらに打ち込みの手間が省ける便利な音色も多数収録しており、懐かしくも新しい音楽を作るのにうってつけのライブラリになっています。
ゲームボーイサウンドフォントの最新バージョンは「DMG-CPU1.5.SF2 (Ver.2012-03-17)」です。
2003年のコミックマーケット65で『ちがうの!ライクじゃないんだよーっ』という、ゲーム音楽やオリジナル曲をゲームボーイ音源でアレンジしたCDを頒布しました。このCDのために作ったのが一番最初のゲームボーイサウンドフォントでした。
当時勤めていた会社に役目を終えて放置されていたゲームボーイ開発機がありました。商業デビュー作となった『ラブひなポケット』など、数本のゲームボーイカラー用ソフトの音楽をデバッグした思い出の開発機です。
デビュー当時は仮音色で作曲したMIDIデータをMMLに半手動でコンバートし、5インチフロッピーディスクに保存して開発機でロードするという手順でデバッグしていました。ゲームボーイの出音を確かめながら作曲するということができなかったのです。
もうゲームボーイで仕事をすることはなくなってしまったけれど、今なら当時の不満が解消できると思ってサウンドフォントを作ったのでした。ゲームボーイの開発経験を踏まえ、理想の音楽表現を追求するために作ったのがゲームボーイサウンドフォントです。
非公開バージョンです。
ゲームボーイ開発機からデフォルト設定音色のみをサンプリングした、必要最低限のサウンドフォントです。
非公開バージョンです。
Gameboy.SF2にポケットカメラで作った音を追加したもの。ただこの時点ではポケットカメラで波形メモリがいじれることを知りませんでした。
一般公開バージョンです。2017年02月23日をもって配布・サポートを終了しました。
ポケットカメラで波形メモリ音色を追加しました。
ゲームボーイサウンドフォントはSound Blaster Live!で制作しましたが、一般公開によって多様な環境で利用されるようになり、作者の意図通りに動作しないケースも見られるようになりました。
一般公開バージョンです。2017年02月23日をもって配布・サポートを終了しました。
DMG-CPU.SF2用のドラム音色拡張サウンドフォントです。
クローズドベータバージョンです。
一般公開バージョンです。
GBMC (GameBoy Music Compiler)で音色を追加し4年ぶりのバージョンアップ。DMG-CPU.SF2との互換性はありません。
過去制作作品のダイジェスト動画を作成しました。(『ちがうの!ライクじゃないんだよーっ』~『ふぉ~ぽりふぉにっくまじっく7』)
1989年4月21日に任天堂が発売した携帯型ゲーム機です。故・横井軍平氏が開発し、彼の哲学である「枯れた技術の水平思考」も有名になりました。
ファミコンと同じコントローラーに4階調のモノクロ液晶画面を備え、サウンドは内蔵モノラルスピーカーとステレオヘッドホン出力に対応。また、2~4台のゲームボーイと通信対戦するための端子も用意されていました。
カートリッジを交換してさまざまなゲームが遊べる携帯ゲーム機としては世界初のヒット商品となり、『テトリス』や『ポケットモンスター』などゲームボーイからヒットしたゲームソフトは数知れません。
モノクロ画面であることを除けばファミコンに近い性能の8ビットゲーム機ですが、細かな点でグラフィックやサウンドは機能強化されており、モノクロ画面でありながら迫力のあるゲーム演出が可能なハードウェアでした。
特にサウンドはステレオ出力に対応していること、ファミコンの三角波のかわりに波形メモリ音源を搭載することで音色表現の幅が広がったことなどが特徴として挙げられ、現在では楽器として愛好する人も世界中にいます。
1994年3月にクリエイティブテクノロジーが発売したパソコン用のサウンドカード「Sound Blaster AWE32」に初めて搭載された、PCMシンセサイザーの音色をフォントファイルのように自由に選べるようにできる機能のことです。
これはサンプラーという楽器そのものであり、サウンドカード付属のものや市販のサウンドフォントだけでなく、ユーザーが自由にサウンドフォントを作成・編集することも可能なものです。
1998年には現在普及しているSF2フォーマットが登場し、サウンドフォントに対応したソフト・ハードの選択肢が広がりました。現在ではクリエイティブテクノロジーの製品がなくてもサウンドフォントを使うことができます。
ちなみにサウンドフォントは、実用的なサンプラーとしては世界初のヒット商品となった「Emulator I」を1982年に発売したE-MUが、1993年3月にクリエイティブテクノロジーに買収されて実現したものです。
楽器の演奏や人の声などを録音して素材化したものを、鍵盤やボタン・パッドなどに割り当てて、音階を変えたり繰り返したりして再生するPCMシンセサイザーの一種です。
一般的なシンセサイザーは電圧制御によって発振する矩形波やサイン波といった単純波形を組み合わせたり、フィルターを通すことによって音色を変化させてさまざまな楽器に似た音を作り出していますが、リアルさには限界もあります。
ゲーム音楽の世界では1985年頃からセガの『アウトラン』や『スペースハリアー』といった大型体感ゲームなどでドラムや人の声などFM音源が苦手とする部分にサンプリングされた音色が使われるようになり、スーパーファミコン以降はゲーム機の中にサンプラー(一般的にはPCM音源と呼ばれます)が搭載されるようになりました。
サンプラーは楽器メーカー各社の独自フォーマットの他に、多少互換性に難はあるものの幅広いソフト・ハードで利用できる互換フォーマットがあり、サウンドフォントはそのうちのひとつです。
デジタル・オーディオ・ワークステーションを略してDAWです。DAWの読み方は「でぃーえーだぶりゅー」または「だう」。私は「でぃーえーだぶりゅー」派です。
オーディオも扱えるようにしたシーケンスソフトのことで、録音、編集、ミキシングなど一連の作業がひとつのソフト内で完結できることから、現在のDTM(デスクトップ・ミュージック)の主流となっています。
そもそもワークステーションとは、一般にキーボードと呼ばれる電子楽器の中でも、特にシンセサイザー(音作り担当)とシーケンサー(演奏担当)が一体型になったもののことをいいます。ヤマハのMOTIFやコルグのTRITON(『けいおん!』の琴吹紬が使用)などが代表的です。
シンセサイザーだけのキーボードだとレコーダーがないと曲作りができませんが、ワークステーションだと弾きながら曲作りができます。これをパソコンで実現したものがDAWソフトといえるでしょう。プロ用の音楽制作ソフトのイメージがありましたが、VOCALOID初音ミクのヒットでDAWソフトも一気に普及しました。
パソコン用のシーケンスソフトは、もともとMIDIデータを編集するためのものでしたが、これにオーディオ機能を追加したものがDAWになったという経緯があります。現在もフリーソフトのDominoなど、MIDIデータに特化したシーケンサーもありますが、パッと見では区別がつかないので注意が必要です。
ゲームボーイサウンドフォントは音色素材集なのでダウンロードしても単体では動作しません。お使いのソフトに合わせてセットアップする必要があります。
DAWソフトやMIDIシーケンサーの種類は多種多様であるため、当サイトですべてをサポートすることはできません。いくつかの大まかなケース別に、代表的なソフトを取り上げて解説します。
ゲームボーイサウンドフォントを使うには、具体的にどんなソフトを用意すればいいのでしょうか?
WindowsにはCubase、SONAR、Studio One、FL Studio、LiveといったさまざまなDAWソフトがありますが、当サイトではStudio Oneのフリー版「Studio One Prime」をおすすめしています。Studio One Primeにはサウンドフォントに対応したソフト音源「Presence」が入っています。
※Studio Oneのベロシティはデフォルトでパーセント入力になっていますが、旧来の128段階入力に切り替えることが可能です。設定方法はマニュアルをご参照ください。
まずお使いのDAWソフトがサウンドフォントに対応しているかどうかをご確認ください。もしサウンドフォントに対応したソフト音源がない場合は、VSTi(ブイエスティーインストゥルメント)でプレイバックサンプラー(録音機能のないサンプラー)を追加することができます。
代表的なVSTiは「DSK SF2」ですが、サウンドフォントに対応したVSTiは他にもたくさんありますので、ご自分にあったものを探してみてください。
「SMF to MP3 with ぼーか郎」は、野池賢二さんのサイトで利用できるオンラインコンバータです。SMF(MIDIデータ)をMP3に変換することができます。人の歌声に変換することができる「ぼーか郎」が特徴ですが、音源の選択肢の中にゲームボーイサウンドフォントが含まれています。
ローカルに使用環境をセットアップする必要がありませんので、TiMidity++のことがよくわからない人におすすめです。当方で動作確認済で、作者の意図通りの演奏結果に変換されます。ただし、ローカルで出音を確認することができないので、MIDIデータの作成には不向きです。
「CoolSoft VirtualMIDISynth」はサウンドフォントをMIDIデバイスとしてWindowsに常駐させるソフトです。MIDIマッパー機能が付いています(Windows8以降は別途「CoolSoft MidiMapper」が必要)。動作確認したところ「TiMidity++」のような不具合もなく、ゲームボーイサウンドフォントとの相性はよさそうです。セットアップ方法についてはこちらの記事をご参照ください。
VirtualMIDISynth のダウンロードと使い方 - k本的に無料ソフト・フリーソフト
「TiMidity++」というフリーのソフトウェアMIDI音源があります。サウンドフォントを自由に組み合わせることで、好みの音源にカスタマイズすることができます。もともとは、MIDIデータを録音するためのソフトです。
インストールすると、WindowsのMIDIマッパーにTiMidity++が追加され、MIDIデータの再生音源として使用できるようになります。
なお、Windows VistaとWindows 7にはMIDIマッパーがないので、フリーウェアを使ってMIDIマッパーを選択できるようにする必要があります。ソフトはいくつかありますが、国産の「MIDIせれくたー0.1」がインストール不要で使いやすくておすすめです。
まずお使いのSound Blasterがサウンドフォントに対応しているかどうかをご確認ください。同じSound Blasterでも、廉価版などではサウンドフォントに対応していない機種があります。
古い機種を利用する場合には、OSのバージョンによってドライバが提供されているか、またドライバが正常に動作するかの確認が必要です。
例えば、Sound Blaster Live! Platinum Plusではパソコンのメモリにサウンドフォントを読み込ませて使用しますが、最新のドライバではサウンドフォントを消してもメモリ上に残ってしまうという不具合が確認されています。
ニコニコ動画でアイマスREMIXを多数手がけるアクノチップ(もりりん)さんが、ゲームボーイサウンドフォントを使った初心者向けチップチューン講座をまとめてくださいました。
講座はStudio One Primeのインストールから始まり、実際にアイマスREMIXを作りながらゲームボーイサウンドフォントの使い方を学んでいく内容になっています。
プロジェクトファイルも配布されていますので、ぜひチャレンジしてみてください。
無料のStudio Oneで作るチップチューン講座(概要編) http://ch.nicovideo.jp/acnochip/blomaga/ar1129950
無料のStudio Oneで作るチップチューン講座(その1) http://ch.nicovideo.jp/acnochip/blomaga/ar1229783
無料のStudio Oneで作るチップチューン講座(その2) http://ch.nicovideo.jp/acnochip/blomaga/ar1229831
無料のStudio Oneで作るチップチューン講座(その3) http://ch.nicovideo.jp/acnochip/blomaga/ar1230612
無料のStudio Oneで作るチップチューン講座(その4) http://ch.nicovideo.jp/acnochip/blomaga/ar1230776
『FMPSG022 -Titan-』収録のオリジナル曲「ごはん炊いたんですよ!」を例に、ゲームボーイサウンドフォントの基本的な打ち込みテクニックを結月ゆかりが解説します。
CH | 音源 | パート | テクニック |
---|---|---|---|
CH1 | 矩形波 | メロディー | 余韻を途切れさせないために白玉を分割して継ぎ足す |
CH2 | 矩形波 | アルペジオ | 分散和音によるセブンスコード、ディレイのステレオ化による音の広がり |
CH3 | 波形メモリ | ベース | 音量によるディレイ効果 |
CH4 | ノイズ | ドラム | 64分音符の割り込み(シンバルとバスドラムを同時に鳴らす、スネア音色バリエーション) |
アルペジオのディレイ効果について、考えられるバリエーションを全て作って鳴らしてみた参考動画『DAWでチップチューン講座~アルペジオのディレイバリエーション~』を追加しました。こちらもぜひご覧ください。
メロディーの途中で音色を切り替える場合や、アルペジオの複雑なディレイを編集する場合に、ひとつのチャンネルに複数のMIDIトラックを使って打ち込むことがあります。
複数のMIDIトラックを使うと、シーケンスの視認性は向上しますが、MIDIチャンネルが分かれているため、ひとつのチャンネルでノートが重なり合い2音以上の音が鳴ってしまうというミスが起こりやすくなります。
トラックを分けた場合は必ずピアノロールで複数のMIDIトラックを重ねて表示し、ダブルノートになっている部分がないかチェックするようにしましょう。イントロ・メロディー・ブリッジ・サビなどフレーズが切り替わるポイントでダブルノートになりやすく、特にディレイトラックの末尾が次のトラックに重なりやすいので注意しましょう。
ゲームボーイサウンドフォントにはビブラートがかかっている音色とかかっていない音色があります。詳しくは音色マップをご覧ください。
ビブラートなしの音色にビブラートをかけるには、モジュレーションホイール(コントロールチェンジ1)とピッチベンドの二通りの方法があります。モジュレーションホイールを使った場合のビブラートはサインカーブになりますが、ピッチベンドを使うと編集は手間ですが矩形波など任意の波形でビブラートをかけることができます。
32分音符よりも細かいノートを高速に動かすことで擬似的に和音が鳴っているように打ち込むテクニックを高速アルペジオといいます。ギョロッとした音になりますが、発音数の少ないチップチューンでは頻繁に用いられるテクニックです。
MIDIで高速アルペジオを作る場合は、まず鳴らしたい場所に和音を打ち込んでおき、それをまとめて短くして、音が鳴る順番をずらしてアルペジオにして、元の長さまでコピーアンドペーストしていくという編集手順になります。短くするときに、和音数で割り切れる長さに設定するのがポイントです。
なお、DMG-CPU1.5.SF2ではオクターブ重ねとパワーコードの高速アルペジオを音色として使えるので、打ち込みの手間を軽減することができます。
ゲームボーイサウンドフォントでオーケストラヒットを鳴らす方法は、高速アルペジオの応用になります。3~4オクターブの同じ音を上から細かく並べ、それを2~3回コピーアンドペーストして音量差を付けてディレイ効果を出せば完成です。
矩形波のデューティ比や波形メモリなど、音色の違いによって響きが変わります。また、オクターブ重ねではなく、和音にしてみても面白い効果が出ますのでいろいろ試してみてください。
なお、DMG-CPU1.5.SF2では矩形波のオーケストラヒットを音色として使えるので、打ち込みの手間を軽減することができます。
パンを左から右へ、右から左へスムーズに動かすにはどうするのかというと、左右のノートの音量差を利用することで擬似的に再現することになります。このテクニックはメロディーよりもアルペジオの方が効果的です。
左右にノートを打ち込むには、ふたつある矩形波チャンネルを左右に割り振って2音使うか、ひとつの矩形波チャンネルを高速アルペジオのように擬似的に2音にしてトラックを分け(これを櫛抜き(くしぬき)といいます)、左右に割り振るという2通りの方法があります。2音の場合はパンニングがなめらかですが、1音の場合はパンニングが荒くなります。
どちらの方法でも表の順番でベロシティを設定することで左から右へパンニングさせることができます。右から左へパンニングさせる場合は表を逆順にご覧ください。
左ノート | 右ノート |
---|---|
128 | 1 |
120 | 8 |
112 | 16 |
104 | 24 |
96 | 32 |
88 | 40 |
80 | 48 |
72 | 56 |
64 | 64 |
56 | 72 |
48 | 80 |
40 | 88 |
32 | 96 |
24 | 104 |
16 | 112 |
8 | 120 |
1 | 128 |
休符をディレイで埋めるというテクニックはチップチューンでは常套手段ですが、ここでは休符に別のパートを割り込ませて発音数が増えたように聞かせるという高等テクニックをいくつか例示します。どんな曲でも使えるわけではありませんが、音数が多い曲を打ち込むときにこういう解決方法もあると覚えておくよいでしょう。
『サンダークロス』の「First Attack」はアルペジオとベースが同じ16分音符でずっと鳴っている曲です。スコア通りに入力するとアルペジオとベースで2音使ってしまいますが、これを1音で打ち込みます。
どうするのかというと、アルペジオとベースの16分音符を打ち込んだら範囲選択してまとめて半分の32分音符に短くします。そして、アルペジオを32分音符うしろにずらします。こうすることでベースの裏拍の休符がアルペジオで埋まり、アルペジオとベースをたった1音で鳴らすことができるのです。
アルペジオが裏拍で鳴ったら気持ち悪いだろうと思われるかもしれませんが、この曲はBPMが240と速い※ので意外と気にならないんです。アルペジオの音量を下げて目立たなくしているのもポイントです。
もしアルペジオではなくベースをうしろにずらしたのだったら気持ち悪いでしょうね。リズム隊はアタックが肝心ですが、アタックさえしっかり聞こえていれば音符は短くしても差し支えない場合もあるのです。
要点をまとめると、BPMが速くて同じリズムで進行しているパートが複数ある曲の場合は、1音で2パート鳴らすことができるかもしれません。
※この曲のBPMはスコア通りだと120ですが、倍の240に聞こえるので240と表記しています。
オリジナル曲の場合は、フレーズにすき間を作ることで作曲段階から意図的に発音数を増やしていくことができます。
ゲームボーイサウンドフォントを使った音楽制作で、ゲームボーイ実機に近い演奏を再現するにはどうしたらよいのでしょうか?
ゲームボーイサウンドフォントはどのように使っていただいても構いませんが、予備知識なしに使うとゲームボーイ音源のスペックを超えてしまって、ゲームボーイらしく聞こえなくなってしまいます。
ゲームボーイサウンドフォントをゲームボーイ音源らしく聞かせるためには、まずゲームボーイ音源がどんなものなのかを知ることが重要です。そのうえでどのようなMIDIデータを作成すればよいかを少しずつ理解していきましょう。
※ゲームボーイサウンドフォントはあらかじめひとつのチャンネルで和音にすることができない設定をしてありますが、お使いのソフトによっては設定が無視される場合があります。
チャンネル | 音色 | エンベロープ | スイープ | 音量 |
---|---|---|---|---|
CH1 | 矩形波 | 16段階 | ||
CH2 | 矩形波 | ― | 16段階 | |
CH3 | 波形メモリ | ― | ― | 3段階 |
CH4 | ノイズ | ― | 16段階 |
ゲームボーイ音源の矩形波はファミコンと似ていて、デューティ比1:1、1:3、1:7、3:1の4種類の音色があります。そのうち3:1は1:3を反転させたもので同じように聞こえるため、ゲームボーイサウンドフォントでは3:1を省略して3種類にしています。
CH1、CH2ともにエンベロープに対応していて、下降では音の減衰を、上昇では音の立ち上がりを7段階で設定することができます。DMG-CPU1.5.SF2では下降の7段階目(最も長い減衰)のみの対応となっています。※
CH1はスイープに対応しています。スイープとは音程を変化させる機能で、効果音を作ることができます。DMG-CPU1.5.SF2ではバスドラムやシンセタムの音色を用意しました。
DMG-CPU1.5.SF2では便宜的にCH1、CH2両方の音色にバスドラムやシンセタムを入れてありますが、CH2ではバスドラムやシンセタムを使わないようにした方が、よりゲームボーイ音源の仕様に忠実な打ち込みになるでしょう。
※音の立ち上がりを遅くしてストリングスのような音にしたい場合もあるでしょう。上昇のエンベロープはボリュームやエクスプレッションを使って粗めの音量カーブを作ってみてください。お使いのソフトによってはサウンドフォントのアタックタイムを調整できる場合もあります。
波形メモリ音源とは波形を自由に描くことができる音源で、矩形波以外の音色も使うことができます。ゲームボーイ音源の波形メモリは長さ32段階×音量16段階の荒いドット絵のような波形になっています(図参照)。
波形メモリ音源はコナミのSCCやナムコPSG、PCエンジンの音源などとして知られています。これらの音源では複数のチャンネルで波形メモリを使うことができますが、ゲームボーイ音源ではCH3だけ波形メモリになっています。
ゲームボーイサウンドフォントではポケットカメラやGXSCCなどから波形メモリ音色をゲームボーイに移植しています。DMG-CPU1.5.SF2では37種類の音色を使うことができます。
ゲームボーイ音源の波形メモリにはさまざまな制約があります。ゲームボーイ音源の音量は通常16段階ですが、波形メモリの音量は3段階しかありません。また、エンベロープに対応していないため、音を減衰させることができません。音が減衰しているように聞かせるためには、大きな音の後に小さな音を付け足してディレイ効果を付けるしかありません。※
ゲームボーイ音源の波形メモリはおもにベースとして使います。メロディーとして使うには上記のような制約があり、打ち込むのがとても難しくなります。しかし、手間がかかる分やりがいを感じる音源でもあります。多彩な音色で特徴を出しやすいので、ぜひ使いこなしてみてください。
※並木学(さんたるる)氏が手がけた『Doki×Dokiさせて!!』では独自ドライバによりフレーム単位で波形を書き換えることで波形メモリ音源でも音量を16段階としているのだそうです。波形を書き換えるということはしきい値以下の波形は消えてしまうので、音量が下がれば波形も変わってきます。ゲームボーイサウンドフォントでは波形は変わらずに音量だけ変化しますので厳密には再現できませんが、再現度を気にしなければ参考にしてみてもよいでしょう。
ゲームボーイ音源のノイズにはホワイトノイズと短周期ノイズの2種類の音色があります。ホワイトノイズはザーッとかゴーッとかいう音が鳴り、短周期ノイズは歪んだギターのような金属的な音が鳴ります。ゲームボーイサウンドフォントではこの2種類の音色を組み合わせてドラムセットを作っています。
さて、本来ノイズに音階はありませんが、短周期ノイズは高音に行くにしたがって音階がはっきりしてくる特徴があります。しかしド・レ・ファ・ラ♭のような歯抜け音階なのでそのままでは楽器として使えません。そこでゲームボーイサウンドフォントでは短周期ノイズにサンプラーで音階を付けています。元の音がどれかについては「Guitar & Drum Kitキーマップ」をご覧ください。
ゲームボーイサウンドフォントのように短周期ノイズできれいなメロディーを演奏することはゲームボーイ実機ではあり得ないことです。謎の技術です。割り切って使いましょう。
MIDIにはベロシティ、ボリューム(コントロールチェンジ7)、エクスプレッション(コントロールチェンジ11)と、音量のコントローラが3種類ありますが、ゲームボーイサウンドフォントではベロシティのみを可変し、ボリュームとエクスプレッションは最大値の127に固定しておきます。
ベロシティは8の倍数で表の数値に設定してください。それぞれデフォルト値がありますが、曲によって適宜調節してください。すべてのチャンネルが同じ音量だと曲がのっぺりしてしまうので注意です。
なお、お使いのソフトによってはベロシティが効かない場合があります。その際はベロシティを一定値(100または127)に固定して打ち込み、ボリュームやエクスプレッションを使って音量を可変してください。なお、ノートと同じタイミングでボリュームやエクスプレッションを設定した場合、音源側がうまく受信できない場合がありますので、1チック手前にずらして設定することをおすすめします。
CH | 音量 | ベロシティ(太字がデフォルト値) | |||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
CH1 | 16段階 | 127 | 120 | 112 | 104 | 96 | 88 | 80 | 72 | 64 | 56 | 48 | 40 | 32 | 24 | 16 | 8 |
CH2 | 16段階 | 127 | 120 | 112 | 104 | 96 | 88 | 80 | 72 | 64 | 56 | 48 | 40 | 32 | 24 | 16 | 8 |
CH3 | 3段階 | 127 | 72 | 40 | |||||||||||||
CH4 | 16段階 | 127 | 120 | 112 | 104 | 96 | 88 | 80 | 72 | 64 | 56 | 48 | 40 | 32 | 24 | 16 | 8 |
ゲームボーイ音源はステレオ出力に対応していますが、真左か中央か真右にしかパンを設定できません。コントロールチェンジ10番の値は左から0、64、127(シーケンサーによっては-64、0、+64)になります。
ゲームボーイ音源についてより詳しい資料は次のサイトを参考にしてください。
P.C. | 使用可能CH | メイン音色名 | サブ音色名 |
---|---|---|---|
001 | CH1, CH2 | Square 1:1 | + Square Perc. 1:1 |
002 | CH1, CH2 | SQ 1:1 Down7 Modulation1 | + Square Perc. 1:1 |
003 | CH1, CH2 | SQ 1:1 Down7 Modulation2 | + Square Perc. 1:1 |
004 | CH1, CH2 | Square 1:3 | + Square Perc. 1:3 |
005 | CH1, CH2 | SQ 1:3 Down7 Modulation1 | + Square Perc. 1:3 |
006 | CH1, CH2 | SQ 1:3 Down7 Modulation2 | + Square Perc. 1:3 |
007 | CH1, CH2 | Square 1:7 | + Square Perc. 1:7 |
008 | CH1, CH2 | SQ 1:7 Down7 Modulation1 | + Square Perc. 1:7 |
009 | CH1, CH2 | SQ 1:7 Down7 Modulation2 | + Square Perc. 1:7 |
010 | CH1, CH2 | SQ 1:1 Fast Arp 2Oct | + Square Perc. 1:1 |
011 | CH1, CH2 | SQ 1:3 Fast Arp 2Oct | + Square Perc. 1:3 |
012 | CH1, CH2 | SQ 1:7 Fast Arp 2Oct | + Square Perc. 1:7 |
013 | CH1, CH2 | SQ 1:1 Fast Arp 3Oct | + Square Perc. 1:1 |
014 | CH1, CH2 | SQ 1:3 Fast Arp 3Oct | + Square Perc. 1:3 |
015 | CH1, CH2 | SQ 1:7 Fast Arp 3Oct | + Square Perc. 1:7 |
016 | CH1, CH2 | SQ 1:1 Power Chord | + Square Perc. 1:1 |
017 | CH1, CH2 | SQ 1:3 Power Chord | + Square Perc. 1:3 |
018 | CH1, CH2 | SQ 1:7 Power Chord | + Square Perc. 1:7 |
019 | CH1, CH2 | SQ 1:1 Orchestra Hit | + Square Perc. 1:1 |
020 | CH1, CH2 | SQ 1:3 Orchestra Hit | + Square Perc. 1:3 |
021 | CH1, CH2 | SQ 1:7 Orchestra Hit | + Square Perc. 1:7 |
022 | CH3 | VRC6 Square 8/16 | ― |
023 | CH3 | VRC6 Square 7/16 | ― |
024 | CH3 | VRC6 Square 6/16 | ― |
025 | CH3 | VRC6 Square 5/16 | ― |
026 | CH3 | VRC6 Square 4/16 | ― |
027 | CH3 | VRC6 Square 3/16 | ― |
028 | CH3 | VRC6 Square 2/16 | ― |
029 | CH3 | VRC6 Square 1/16 | ― |
030 | CH3 | VRC6 Saw | ― |
031 | CH3 | FC Triangle | ― |
032 | CH3 | SCC Saw1 | ― |
033 | CH3 | SCC Saw2 | ― |
034 | CH3 | SCC Triangle1 | ― |
035 | CH3 | SCC Triangle2 | ― |
036 | CH3 | SCC Sine1 | ― |
037 | CH3 | SCC Sine2 | ― |
038 | CH3 | SCC Bass | ― |
039 | CH3 | SCC Guitar1 | ― |
040 | CH3 | SCC Guitar2 | ― |
041 | CH3 | SCC Guitar3 | ― |
042 | CH3 | SCC Organ1 | ― |
043 | CH3 | SCC Organ2 | ― |
044 | CH3 | SCC Organ3 | ― |
045 | CH3 | SCC Piano | ― |
046 | CH3 | SCC Harmonica | ― |
047 | CH3 | SCC Strings1 | ― |
048 | CH3 | SCC Strings2 | ― |
049 | CH3 | SCC Brass1 | ― |
050 | CH3 | SCC Brass2 | ― |
051 | CH3 | SCC Brass3 | ― |
052 | CH3 | SCC Lead1 | ― |
053 | CH3 | SCC Lead2 | ― |
054 | CH3 | SCC Lead3 | ― |
055 | CH3 | SCC Lead4 | ― |
056 | CH3 | SCC Lead5 | ― |
057 | CH3 | SCC Double Lead1 | ― |
058 | CH3 | SCC Double Lead2 | ― |
059~127 | ― | ― | ― |
128 | CH4 | Guitar & Drum Kit (Sub) | ― |
P.C. | 使用可能CH | 音色名 |
---|---|---|
001 | CH4 | Guitar & Drum Kit |
ノートNo. | 音色名 |
---|---|
000 (C-1) | Square Bass Drum1 |
001 (C#-1) | Square Bass Drum2 |
002 (D-1) | Square Bass Drum3 |
003 (D#-1) | Square Bass Drum4 |
004 (E-1) | Square Snare Drum1 |
005 (F-1) | Square Snare Drum2 |
006 (F#-1) | Square Tom1 |
007 (G-1) | Square Tom2 |
008 (G#-1) | Square Tom3 |
009 (A-1) | Square Tom4 |
010 (A#-1) | Square Tom5 |
011 (B-1) | Square Tom6 |
012 (C0) | Square Tom7 |
013 (C#0) | Square Tom8 |
014 (D0) | Square Tom9 |
015 (D#0) | Square Tom10 |
016 (E0) | Square Tom11 |
017 (F0) | Square Tom12 |
018 (F#0) | Square Tom13 |
019 (G0) | Square Tom14 |
020 (G#0) | Square Tom15 |
021 (A0) | Square Tom16 |
022 (A#0) | Square Tom17 |
023 (B0) | Square Tom18 |
※ノートNo.024 (C) ~ 127 (G)はメイン音色が発音されます。
ノートNo. | 音色名 |
---|---|
000 (C-1) | ↑ |
001 (C#-1) | ↑ |
002 (D-1) | Noise Guitar D1 ☆ |
003 (D#-1) | ↓ |
004 (E-1) | ↓ |
005 (F-1) | Noise Guitar F1 ☆ |
006 (F#-1) | ↓ |
007 (G-1) | ↓ |
008 (G#-1) | Noise Guitar G#1 ☆ |
009 (A-1) | ↓ |
010 (A#-1) | ↓ |
011 (B-1) | ↓ |
012 (C0) | Noise Guitar C2 ☆ |
013 (C#0) | ↓ |
014 (D0) | ↓ ☆ |
015 (D#0) | ↓ |
016 (E0) | ↓ |
017 (F0) | Noise Guitar F2 ☆ |
018 (F#0) | ↓ |
019 (G0) | ↓ |
020 (G#0) | Noise Guitar G#2 ☆ |
021 (A0) | ↓ |
022 (A#0) | ↓ |
023 (B0) | ↓ |
024 (C1) | Noise Guitar C3 ☆★ |
025 (C#1) | ↓ |
026 (D1) | ↓ ☆ |
027 (D#1) | ↓ |
028 (E1) | ↓ |
029 (F1) | Noise Guitar F3 ☆★ |
030 (F#1) | ↓ |
031 (G1) | ↓ |
032 (G#1) | Noise Guitar G#3 ☆★ |
033 (A1) | ↓ |
034 (A#1) | Bass Drum3 |
035 (B1) | Bass Drum2 |
036 (C2) | Bass Drum1 |
037 (C#2) | Snare Drum3 |
038 (D2) | Snare Drum1 |
039 (D#2) | Snare Drum4 |
040 (E2) | Snare Drum2 |
041 (F2) | Low Tom2 |
042 (F#2) | Closed Hi-Hat |
043 (G2) | Low Tom1 |
044 (G#2) | Pedal Hi-Hat |
045 (A2) | Mid Tom2 |
046 (A#2) | Open Hi-Hat |
047 (B2) | Mid Tom1 |
048 (C3) | High Tom3 |
049 (C#3) | Crash Cymbal1 |
050 (D3) | High Tom2 |
051 (D#3) | Ride Cymbal1 |
052 (E3) | High Tom1 |
053 (F3) | Ride Bell |
054 (F#3) | Tambourine |
055 (G3) | Reverse Cymbal |
056 (G#3) | Cowbell |
057 (A3) | Crash Cymbal2 |
058 (A#3) | Vibra-slap |
059 (B3) | Ride Cymbal2 |
060 (C4) | Noise Guitar C3 ☆★ |
061 (C#4) | ↓ |
062 (D4) | ↓ ☆ |
063 (D#4) | ↓ |
064 (E4) | ↓ |
065 (F4) | Noise Guitar F3 ☆★ |
066 (F#4) | ↓ |
067 (G4) | ↓ |
068 (G#4) | Noise Guitar G#3 ☆★ |
069 (A4) | ↓ |
070 (A#4) | ↓ |
071 (B4) | ↓ |
072 (C5) | Noise Guitar C4 ☆ |
073 (C#5) | ↓ |
074 (D5) | ↓ ☆ |
075 (D#5) | ↓ |
076 (E5) | ↓ |
077 (F5) | Noise Guitar F4 ☆ |
078 (F#5) | ↓ |
079 (G5) | ↓ |
080 (G#5) | Noise Guitar G#4 ☆ |
081 (A5) | ↓ |
082 (A#5) | ↓ |
083 (B5) | ↓ |
084 (C6) | Noise Guitar C5 ☆ |
085 (C#6) | ↓ |
086 (D6) | ↓ ☆ |
087 (D#6) | ↓ |
088 (E6) | ↓ |
089 (F6) | Noise Guitar F5 ☆ |
090 (F#6) | ↓ |
091 (G6) | ↓ |
092 (G#6) | Noise Guitar G#5 ☆ |
093 (A6) | ↓ |
094 (A#6) | ↓ |
095 (B6) | ↓ |
096 (C7) | Noise Guitar C6 ☆ |
097 (C#7) | ↓ |
098 (D7) | ↓ |
099 (D#7) | ↓ |
100 (E7) | ↓ |
101 (F7) | Noise Guitar F6 ☆ |
102 (F#7) | ↓ |
103 (G7) | ↓ |
104 (G#7) | ↓ |
105 (A7) | ↓ |
106 (A#7) | ↓ |
107 (B7) | ↓ |
108 (C8) | Noise Guitar C7 ☆ |
109 (C#8) | ↓ |
110 (D8) | ↓ |
111 (D#8) | ↓ |
112 (E8) | ↓ |
113 (F8) | ↓ |
114 (F#8) | ↓ |
115 (G8) | ↓ |
116 (G#8) | ↓ |
117 (A8) | ↓ |
118 (A#8) | ↓ |
119 (B8) | ↓ |
120 (C9) | Noise Guitar C8 ☆ |
121 (C#9) | ↓ |
122 (D9) | ↓ |
123 (D#9) | ↓ |
124 (E9) | ↓ |
125 (F9) | ↓ |
126 (F#9) | ↓ |
127 (G9) | ↓ |
ゲームボーイサウンドフォントが使われている作品を随時ご紹介させていただきます。(敬称略)
なお、使用バージョンが明記されていない場合は作者が耳で確認して判定しています。間違っていたらごめんなさい。